マルタのバス:The Buses and Busmen in Malta ― 2010/01/12


マルタ:ボンネットバス

マルタでは1920年から公共交通機関として本格的にバスが使用されているが、イギリス等からその車体のほとんどを輸入し、エンジンを修理・調整、シャシーだけ利用してマルタで作った車体をかぶせて使ってきた。鉄道が走っていない*、また舗装されていない道も多い小さな島国を、例えば輝くほどに磨き上げられた40年前のバスが今も健在で走っている。すっかり少なくなったもののボンネットバスも現役で走り回っているし、エンジンルームの箱が運転席の横に鎮座しているバスも当たり前に見ることができる。

一台一台が異なる顔を持つ車体の多様さのみならず、車内は運転者各人の趣味をあらわすようにさらに個性豊かに飾られている。これはほとんどのバスがバス会社のものではなく、運転手個人が所有しているものであるからだ。仕事の相棒として大切に手入れをしながら乗り回し、誰かが引退すると、その知人がその車体を譲り受けながら、古い車をずっと使い続けるのである。


ゴゾ島のバスの内部

マルタで使用されているバスとその歴史を紹介した書籍"The Malta Buses"が、そこで語られるバスのストーリーについて、バスの所有者である運転手の「個人とその家族のストーリーである」としているように、一台一台の車に、運転手の深い愛情と彼の人生を感じることができる。この本を買ったときのこと、店員は「マルタのバスが好きなの?とてもlovelyでしょ。でもこういうよさはもうなくなってしまうから、今のうちよく見ておいてね」とそっと遠くを見る目で、まるで自分に言い聞かせるかのように語った。

2004年5月にマルタがEUに加盟、EU加盟国間の車両使用に関する規定により、基準を満たさない古いバスは使用を認められない。観光用のみならず地方では今も日常の足として使われている馬車が行きかう道をのんびりと走る、これら個性豊かなバスたちも遠からず姿を消す運命にある。

*1883-1931年の間、Valetta-Rabat間を鉄道が走っていた。現在、Valetta駅のトンネル跡は、正門右手に洗車場としてその痕跡を残し、Rabat駅跡は、現在ビザレストランとして使用されている。

(参考文献)
"The Malta Buses" Joseph Bonnici & Michael Cessar,1989 (自費出版)
"The Malta Railways" Joseph Bonnici & Michael Cessar,1987 (自費出版)
「バスの王国 マルタ」 宮崎紘一他 (楽天舎書房)

コメント

_ 詞子 ― 2010/01/12 08:50

本当にlovelyなバスですね。内装に運転手さんの趣味が反映されていると、乗るのも楽しいでしょうね。
こういう個性的な乗り物が消えていってしまうというのは、とても残念なことです。

_ ほんじゃろか ― 2010/01/12 10:30

EUに加盟することによりマルタのバスの中には走れなくなるのもあるのですね。時代の趨勢とはいえ、近代化するにつれて合理化され便利になる一方、失われていく情緒もありますよね…。

淋しい気もしますが、認めざるを得ない現実なのでしょう。

_ のら☆ ― 2010/01/13 19:26

一日中バスの写真だけを撮っていても飽きないほど、個性豊かで、古い車が好きな私は狂喜乱舞してしまいます。たまたま通りがかった凝った装飾のバスや古い型のバスに思わずカメラを向けると「どうだ!かっこいいだろ!」という風に、運転席から親指を突き出されますよ。

初めてマルタに来たのは2004年7月、EU加盟の2ヵ月後でした。その頃と比べて、バスターミナルの風景が変わって見えるほど、古いバスが減りました。

EU加盟とマルタについてはマルタ人の生の声もずいぶんと聞いているので、時間ができたら、別途記載したいと思います。

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